2011年05月04日

スペインで25歳の息子が小遣いを打ち切った親を提訴。働け、との判決。

笑い話ではない。本当の話だ。ただ、スペインという国の現状を伝えているため取り上げてみた。

4月27日、スペイン南部マラガの家庭裁判所が、小遣いを打ち切った両親を提訴した25歳の息子に対し、判決を下した。

その判決は、30日以内に実家を離れて仕事を見つけることを命じたものだった。

この息子が毎月両親から得ていた小遣いは588米ドルというからおおよそ5万円足らずになる。

────────────

ここで本題とは関係ないが、Googleの便利な機能を紹介します。

Googleの検索フィールドに「588米ドルを円で」と入力して検索を実行すると、円換算された金額が表示されるのです。いやぁ、便利です。

────────────

実家で暮らしていたので、光熱費や食費の一部も負担しないで済むので、まぁ良い小遣いだろう、というより、25歳の男が小遣い暮らしをしているなどとはけしからん──と、今のところの日本であれば、言われてしまうだろう。

しかしスペインでは事情が異なる。それについては後で述べるとして、それにしても、この息子、小遣いのことで両親を提訴するという感覚は私にも分からない。

小遣いがもらえないなら働け、というのが、やはり現在の日本の感覚だ。

そして判決が下された。

勿論、「小遣いを与えなさい。」とは、さすがにスペインでもあり得なかった。判決は日本人でもまぁ、理解できる範囲の内容となった。

すなわち、息子に対しては30日以内に実家を離れて仕事を見つけること。そして両親に対しては、2年間に限り月に292ドル(約2万3千円)の食費を与えること。また、息子の車のローンを肩代わりすること、となった。

この両親が小遣いをあげなくなったのは、息子にちゃんと働いて欲しかったためらしい。

「就職を決めるまで小遣いはやらん。」

そう通告したのだ。ところがこの息子、だだのこね方が激しかった。両親に暴力を振るったり、ののしりの言葉を吐き付ける様になったのだ。

そしてとうとう両親を提訴するに至った。両親が気の毒だが、育て方も悪かったのかもしれない。

「何かしらの職は見つかるはずだ。」

と家裁のコメント。

ちなみに両親は共働きできちんと働いているので決して息子にとって悪い見本ではなかった。

母親はレストランで働いており、父親はゴミ収集会社に勤めている。

ところが現在のスペインでは、子供が30代になっても親元でやっかいになっている、という状況は珍しくはないのだという。

スペインの失業率は非常に高い。以下のグラフを見ていただくと、現在問題になっているギリシャやポルトガルよりひどいのがわかる。参考までに米国と日本もグラフに含めてみた。

[世] 失業率の推移(2000〜2011年)の比較(スペイン、ギリシャ、ポルトガル、アメリカ、日本)

グラフ上の最新のスペインの失業率は19.4%だが、4/29のスペイン政府発表によると、今年の1〜3月の失業率はとうとう21.29%に達したという。しかもこれが若年層に限れば40%と倍増するらしい。若者の5人に2人は失業しているという有様だ。そのような背景があって、前述の様な裁判が行われている。

スペインの失業者数はEUでは最高になっていたのだ。具体的な人数にすると、490万人が失業している。スペインの総人口は約4532万人だ。

そして政府の統計では、138万世帯が職を持たない成人を抱えている状況だという。

いよいよIMFによる財政支援の要請が必要なのではないかと言われている。

現在社会労働党政権を率いるサパテロ首相は、経済政策の失敗を認め、次期総選挙には出馬しないことを表明した。もはや手に負えないということだろう。総選挙は来年の3月だ。

実際世論調査でも、社会労働党は野党の国民党を支持率で下回った。

しかもこの不景気は、日本のデフレとは異なり、よりやっかいだ。インフレ率のグラフを見ていただきたい。比較のために、EUでもましと言われているドイツとフランスも加えてみた。

[世] インフレ率(消費者物価指数)の推移(2000〜2011年)の比較(スペイン、ギリシャ、ポルトガル、日本、ドイツ、フランス)

スペインのインフレ率はベラボーに高いわけではないが、117.41%を示しており、同じ不況にあえぐ国とはいえ、日本の99.66%(つまりデフレ)とは異なる。

これ、スペインではいよいよスタグフレーションが始まっているのではないか。

スタグフレーションは、経済活動の停滞と物価の上昇が同時に起きてしまう状況を示す。

普通なら、物価が上昇しているときというのは、景気が拡大していることを示すものだ。それがインフレであり、緩やかなインフレは歓迎されるとする。この場合、インフレが激しくなっても、それを制御するのは難しくはない。

供給を拡大したり、国債の発行を控えて償還したり、マネーの供給をストップしたりといろいろある。

しかし、景気が悪化するにもかかわらず物価が上昇する状態は、やっかいだ。この状況では、雇用が減少したり、雇用されていても賃金が下がったりしている。しかも物価の上昇で貨幣価値が低下しているため、預貯金の価値も低下している。

つまり、単純なインフレ対策もデフレ対策も行えない。

日本の様なデフレであれば、大まかな対策としては(それすら現政府は行わないが)需要拡大、国債発行の拡大、中央銀行(日本の場合は日銀)による国債買い取り、マネーの供給などがありえる。

しかもさらにやっかいなことに、スペインが独自通貨を使用していれば、自国の中央銀行による金融政策も行えるが、ユーロ加盟国であるため、金融政策をECBに委譲してしまっている。

PIIGSを見ていると、経済上の国境を無くすことが必ずしも景気を良くするわけではないことが証明されてしまっているではないか。

さて、この先スペインはどのような経済政策を行うのか、ユーロ圏は壮大な実験のまっただ中にあるといえる。






posted by しげまる | Comment(0) | TrackBack(0) | ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。