2011年05月04日

このままでは福島第1原発の作業員が居なくなってしまう!驚くべき実態

先日、東京電力の役員や社員の報酬がカットされても一般的な給与所得者からみればまだまだ高額な報酬を受け取っていることを、貧乏人の僻(ひが)みと共に投稿した。

『減俸されてもまだ羨ましい高給取りの東京電力社員や役員』(5/1)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/198752671.html

そこで驚いたこととして、50%削減されても役員の平均年収が1850万円前後を維持できることを紹介した。

しかもそこには年金や退職金、ボーナスなどの一時金は含まれていないことにもまた驚いてしまった。

平社員でさえ、例えば40.6歳の報酬カット後の年間給与が608万円もあり、しかもボーナスで元の給料を補填できる可能性が残されていることにも触れて、またまた驚いてしまった。

さらに驚かされたことがたくさんあったが、それらは上記のブログ記事を参照して(驚いて)いただきたい。

さて、今回のテーマは、福島第1原発の事故収束のために、現場で働いている人たちのことだが、実は上記の記事の終わりにやっぱり驚くべきことを書いた。

それは、これだけ高額報酬を維持しようとしている東京電力が、福島第1原発の現場で危険で過酷な作業を行っている協力先企業への支払いの保留を通知していたということだ。

そして下請け業者の一人のコメントを紹介した。

「入金が無いと従業員へ支払う給料が出せず、(事故現場の)危険な作業も続けられない」

安全な場所で事故の原因を作った企業の役員や社員達が高額報酬を約束されている時に、原発事故の現場で危険かつ過酷な作業に従事している人たちへの報酬をカットしようとしているのだ。

この優先順位のでたらめさに呆れた。

そしてそれを裏付ける現場の作業員の体験談が「現代ビジネス」(5/3)で掲載された。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2771

その様子を「現代ビジネス」の取材記事から引用しつつ紹介したい。また、その後で、現場作業員が不足していることを裏付けるようにハローワークで補充すべき作業員の募集が行われている状況についても紹介したいと思う。

福島第1原発で既に10年ほど働いている中堅どころの作業員が、現在の現場の状況を吐露した。以下、この作業員のコメントは前述の「現代ビジネス」の記事から引用している。

「疲れは、もう限界です。普段は免震棟という耐震機能が高く、鉛のシートで放射線を遮っている特別な建物で寝泊まりしているのですが、35m四方ほどの会議室にみんなで雑魚寝ですよ。支給されるのは毛布1枚だけ。しかも簡易防護服を着たまま眠るのです。500人以上の作業員が出入りしているので、まさに寿司詰め状態で、中には部屋に入れずに、耐熱シートを敷いて廊下で寝ている人もいます。裸になると高濃度の放射線を浴びる恐れがあるので、風呂もシャワーも使えず汗も流せません。最近ではようやく3食出るようになりましたが、先月まではカロリーメイトと野菜ジュース、水を入れると温かくなる『マジックライス』などが一日2食支給されるだけでした。こんな状態で、疲れが取れるわけがないでしょう。作業員たちは疲弊しきった表情で、お互い話す気力もなく黙り込んでいます」

現場作業員が疲弊している状況が分かる。現在は4日泊まり込みで働き、2日休みを取って帰宅する、というサイクルらしい。

この作業員は震災前までは別の仕事のために福島県外にいたところを、急遽呼び戻されたという。

そして作業に入る前に元請けの事務所で驚くべき書類に署名させられている。

「要請されて1F(福島第一原発の通称)に入る前に元請け(親会社)の事務所に行ったんですが、驚きました。机の上に1枚の誓約書が置いてあり、こんな内容が書かれてあったんです。『最大250ミリシーベルト以上の放射線を浴びても、私は自分の意思で働く』。250ミリシーベルトとは、緊急時の作業員の被曝限度量です。長年1Fで働いていますが、こんな書面を書かされたのは初めてですよ。元請けの所長は『強制じゃないからな』と妙に真面目な顔で言っていましたが、今さら『そんなに危ないならやめます』とも言えません。恐る恐るサインをしました」

これは完全に東京電力が国の放射線量規制を現場では踏みにじっている証拠ではないか。

しかも異常だったのはこれだけではない。本来原発に出入りする際には、規定の放射線量を超えて浴びないように、毎回浴びた放射線量を記録する「原発手帳」を携帯することが義務づけられていたのだが、今回は「必要ない」と言われているのだ。

本来この原発手帳の携帯と管理は厳しく言い渡されていたが、それが今回は不要だという。

「私たちは『1Fでは凄まじい量の放射線が測定され、数値を手帳に打ち込むと今後は誰も働けなくなってしまうから、持たせないようになったんじゃないか』と話し合っているんです」

そのように作業員達が疑心暗鬼になっても不思議ではないだろう。

しかもマスコミ報道では改善されたという作業環境は相変わらず過酷なことが分かる。

朝、ビスケットと野菜ジュースを飲んだきり、夕方の5時まで作業を続けさせられることもあるのだという。

「9時間以上も屋外で働かされた上、高濃度の放射線の中の作業で気が張っていたため、屋内に入った途端しゃがみ込んでしまう作業員も多くいました。免震棟に入る前には東電の保護官が放射線量をチェックしますが、数値は教えてもらえません。おそらく普段なら制限値以上の量を浴び隔離されてもおかしくない作業員もいるのでしょうが、みんな『大丈夫』の一言で片付けられています。」

作業員は肉体的疲労に加えて、不安と恐怖のストレスも抱え込んでいる。また、これは仕方が無いことかもしれないが、衛生状態も非常に悪い。

「衛生状態も最悪です。外気は冷たいですが、服の隙間をぶ厚いテープで塞いだ防護服に完全マスクという姿で動き回っていると汗だくになります。それでも作業員は、シャワーすら浴びられない環境で働いているんです。免震棟の中は強烈な体臭や薬品の化学臭などの混じった、異様な臭いで充満しています。」

3日も働くと、多くの人がめまい、嘔吐、頭痛に襲われるという。

そして作業員の間では、噂や憶測も流れるようになる。福島第2原発にある医療対策室には、既に20人以上の作業員が倒れて運ばれたという噂が流れているらしい。

そして今回の投稿で取り上げたかったのは次のことだ。

当然これだけの過酷で危険な作業環境に従事しているわけだ。自分のため、あるいは家族のために体を張っている人も多いだろう。せめて報酬が満足いくものであれば、家族のためだと励みにもなる。

そこで、この取材に応じた作業員は元請けの所長に、改めて報酬について確認した。「作業の手当はいくらなのか?」と。

すると驚くべき回答が返ってきた。

「東電は福島第1原発の周囲で避難指示が出ている住民や、被害を受けた農漁業者への補償で莫大なカネがいる。今までのような報酬をもらえないかもしれないので、給料のカットを覚悟してくれないか」

──給与のカット?!

あり得ない回答である。現在この国で最も過酷で危険な作業現場かもしれないのだ。そこで国民の安全を背負って自らの健康や命を犠牲にして働いている人たちの給与を、特別に高く支払うならまだしも、カットを覚悟してくれと言う。

信じられないが、前回のブログで紹介した以下の記事が裏付けられてしまった。

“これだけ高額報酬を維持使用としている東京電力が、福島第1原発の現場で危険で過酷な作業を行っている協力先企業への支払いの保留を通知していたということだ。”

いったいこのことを決めている立場の者は、人の心を持ち合わせているのだろうか。

ちなみにこの取材に応じた作業員は、既に辞めることを考えているという。当然だろう。

しかもこれから気温が上がる夏場の作業など、想像しただけで気が遠くなるに違いない。おそらく熱中症で作業員がばたばたと倒れるのではないか。

取材にも答えている。

「(これから暑くなると言うのに)東電からは何の暑さ対策≠熄oされていません。通常の夏場でも、5分作業しただけで体中が汗まみれになり、熱中症で一日に5〜6人倒れることもあるのです。対策もないまま猛暑の中で仕事をすれば、作業員がバタバタと倒れるとんでもない事態となる。」

このような状態でおそらく既に多くの作業員が辞めることを意思表示しているのではないか。

そのことを裏付けるかのように、既に全国のハローワークでは、作業員補充のための求人が行われている。そしてその内容を見る限り、ちまたで噂されていたような高額報酬ではない。

以下のURLをクリックすると、東洋経済(Toyokeizai Online)に掲載されていたハローワークに掲載されている福島第1原発の作業員の求人リストを見ることができる。(いつまでウェブ上で公開されているか分からないが)

http://lib.toyokeizai.net/public/image/2011050200974042-1.jpg

「沿線/就業場所」項には「福島第1原発」とは書かれていないが、その住所が書かれている。また、「職種」項を見れば、おおよその作業内容が分かる。

特に「急募!!(請負)被災地現場作業・作業管理者」や「急募!!(請負)被災地現場作業」とあるのは、まさに上記で紹介した作業員の補充募集だろう。

その賃金を見ると、40万円(税込み)となっている。確かに一般的なアルバイトや派遣、あるいは会社員に比べると悪くない給与が示されているが、決して突出した高額ではない。

金融機関などの高所得者から比べれば低い方だろう。ましてや東京電力の社員に比べれても低く、安全な場所にいる役員に比べると悲しいほど少ない。

東京電力の役員は、報酬の割引ではなく全額返上すべきだ。それで浮いた分を現場作業者に回すべきである。

そうしなければ、この国難たる福島第1原発の事故収束に従事する作業員がいなくなってしまう。



posted by しげまる | Comment(2) | TrackBack(0) | ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 そして、現場作業員の所属する協力企業が猛烈なピンハネをしているのです。
Posted by SW at 2011年05月05日 00:08
SWさん、コメントありがとうございます。

確かに、そうとうピンハネしていると思われます。ピンハネとマージンの言葉の使い分けの境界線は不明確ですが、結局下請けや孫請けの現場作業員が最も搾取されているのだろうなぁ、ということは、他の業界でも同じですね。

私の業界でも同じです。

お金って恐ろしいですね。
Posted by 管理人 at 2011年05月05日 10:00
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