4日、参議院予算委員会で前原誠司外務大臣は、外国人からの献金を受けていたことを「認めた」。明らかな政治資金規正法「違反」である。
これに対する民主党執行部の対応がもはや正気の沙汰ではない。
と、それについては後ほど触れるので、ここでは後回しにしたい。まず、ことの発覚から追いかけてみたい。
参議院予算委員会で自民党の西田昌司議員が問うた。
「その方は日本国籍をお持ちなんでしょうか」
これに対し、前原誠司外務大臣は答えた。ここで我々は耳を疑う。
「在日の方であります。献金を受けておりました。これについては返金をして、収支報告書を訂正させていただきたいと思います」
認めている。そして「訂正させていただきたい」と答えた。え?もう一度?「訂正」すれば良いのか?
スーパーで万引きした人たちが良く言うのだ。「払いますよ、払えばいいんでしょ。」「返しますよ。返せばいいんでしょ。」
同じ感覚だ。自分の立場の重さをご存じないらしい。
西田昌司議員はそのことを国会言葉で前原誠司外務大臣に諭してあげた。
「あなたは、大臣どころか国会議員の資格がないということですよ。責任とって辞職すべきじゃないですか」
はい、まったくその通りです。西田昌司議員はあまりに当たり前なことを言っている。周りの人たちも恥ずかしかっただろう。万引きした人たちにスーパーの店長は言うのである。
「あなたがやったことは、泥棒なんですよ。犯罪行為なんですよ。分かっているんですか?」
前原誠司外務大臣が白状したところでは(このあたりは潔いと言うべきか、観念したというべきか)、その外国人とは、京都市内の自営業者で在日外国人の女性だという。
2008年に5万円の献金を受け取った。これについては後に記者会見で、「5万円があったということだが、委員会では4年間で20万円ということだったので、ほかの献金者や外国企業がないか調べたい」と述べているので、全額は実は分かっていない。
そしてこの献金者について、「政治の世界に入る前から親しくし、特に私が政治の世界に出てからも一生懸命応援いただいている」とこれまた開き直っている。要するに、前原誠司外務大臣の政治家としての行動に、影響を与えてきました、と語るに等しい。
但し、「献金を受けているという認識はなかった。」と言っている。政治家が応援している人から金をもらって、「献金」ではないとしたら、何なのだろう。何のつもりだったと言うのか?前原教へのお布施か?
まぁ、当然辞任だろう。前原誠司外務大臣に近い人物たちも「前原さんの性格からして辞任するだろう。」と思われていた。
しかし、菅直人首相の周辺には、与謝野馨経済財政政策担当大臣を代表として、権力に執着するあまり、妖怪と化してしまう妖気が漂っているらしい。
前原誠司外務大臣は辞任を否定した。仰天とはこのことである。しかも──いや、正確には案の定というべきか、菅直人首相もこれを支持する意向だ。この人たち、大丈夫か?いや大丈夫ではないだろう。
施行部から距離を置くことで菅直人首相の妖気に触れず、正気を保っている鳩山由紀夫前首相はまっとうなことを言っている。
「明確に禁止されていることをしたわけで、本人も認めてしまっている。執行部として早く対応すべきだ」
妖気の濃度がまだ薄い民主党の議員たちは慌てた。
「一分一秒でも早く辞任しないと政権がもたない」
と菅直人首相に進言する者たちもいた。しかし、権力亡者となり、目がうつろな菅直人首相は「前原氏が辞任すれば閣僚の『辞任ドミノ』につながり、日米関係にも影響する」と、このお方、何か妙な薬でも飲みましたか?
とにかく俺の頭ではもう何も考えられないと、5日には早速これまた妖気に侵された枝野幸男官房長官と福山哲郎副官房長官らを呼び寄せて、協議を始めた。こういうことになると動きが敏捷だ。
同日の夜になると、すっかり権力亡者としての自分を取り戻した前原誠司外務大臣は、北九州市での民主党衆院議員の会合でさらに続投の決意を宣言した。
「力を合わせて難局を乗り切って頑張らせていただきたい」
勿論、「力を合わせる」のは、妖気に飲み込まれた執行部だろう。そして名言を語る。
「政府全体、予算審議にどういう影響を与えるか、私心を捨てて大局的に判断しなければならない」
そう、「私心」に支配された者は軽々しく言うものだ。「私心を捨てて」などと。
さて、もう一人妖気にどっぷりと浸かっている岡田克也幹事長はテレビというマスコミを利用するはずが、うっかり醜態をさらしてしまった。
「違法なのは事実だが、事務的ミスでいちいち閣僚を辞めなければならないとするのが果たして適切なのか」
違法を「事実」と決めうちしてしまい、しかも慌てて「事務的ミス」と言い換えてこの問題を「取るに足らないもの」とイメージづけようとしていることを顕わにしてしまった。
何事か。違法行為を「仲間」が侵した場合は、たかが「事務的ミス」で良いのだという。尋常ではない妖気が漂っている。民主党執行部に正気を保っている人物は居るのか。近代法治国家の住人はいるのか。まるで北朝鮮の金一族とかいう国際天然記念物に似ている。
岡田克也幹事長が言っていることは、国会議員は、特に政権与党の閣僚たるものは、法を犯しても全然問題ないのだ、と開き直っているに過ぎない。この国はどうなってしまったのか。
自民党の石原伸晃幹事長は当然妖気の外にいるので、これまた当たり前のことを言っている。
「政治資金規正法で有罪が確定すれば公民権停止となる重い罪だ。『間違えていた』では済まない
そう、公民権停止が筋だ。公民権停止とは、選挙権・被選挙権の停止を意味する。
また同党の山本一太参院政審会長もテレビ番組で辞任すべきことを補足した。
「複数年もらっており『献金の認識はなかった』という言い訳は通じない」
そして「前原氏が辞めれば首相の任命責任が出てくる」と、菅直人首相が一番聞きたくない言葉を述べた。
同番組では、菅直人首相が横恋慕する公明党の、高木陽介幹事長代理も発言している。
「前原氏は責任を取るべきだ。しっかりとけじめをつけてほしい」
そして彼ら民主党執行部の大いなる矛盾はこれから噴出するだろう。
このたびの前原誠司外務大臣の政治資金規正法違反は、明確な事実である。何しろ本人も認めている。つまり明確に有罪だ。
しかし、前原誠司外務大臣は続投を表明し、菅直人首相や執行部もそれを支持している。
おかしすぎるだろう。
この事実に対し、党員の資格停止処分を受けた小沢一郎元代表は、ただの「疑惑」であり、「推定無罪」である。
この対処の天と地ほどの違いに彼らは気づかないのか。自分たちが狂っていると自覚できないのだろうか。
政治資金規正法違反の第二十二条の五に外国人からの政治資金を受け取ることが明確に禁止されている。
第二十二条の五何人も、外国人、外国法人又はその主たる構成員が外国人若しくは外国法人である団体その他の組織(金融商品取引法第二条第十六項 に規定する金融商品取引所(以下この項において単に「金融商品取引所」という。)に上場されている株式を発行している株式会社のうち定時株主総会において議決権を行使することができる者を定めるための会社法 (平成十七年法律第八十六号)第百二十四条第一項 に規定する基準日(以下この項において「定時株主総会基準日」という。)を定めた株式会社であつて直近の定時株主総会基準日が一年以内にあつたものにあつては、当該定時株主総会基準日において外国人又は外国法人が発行済株式の総数の過半数に当たる株式を保有していたもの)から、政治活動に関する寄附を受けてはならない。
そしてこれを侵せば「三年以下の禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。」と規定されている。
第二十六条の二次の各号の一に該当する者は、三年以下の禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。三 第二十二条の三第六項、第二十二条の五第一項又は第二十二条の六第三項の規定に違反して寄附を受けた者(団体にあつては、その役職員又は構成員として当該違反行為をした者)
すぐにでも政治活動を中止せねばならない立場であることを分かっているのか。逮捕されるべき立場である。
ここで菅直人首相に問うべきである。「政治と金」の問題との決別を宣言し、「クリーンな民主党」標榜してきたあなたは、すぐにでも前原誠司外務大臣を罷免すべきですよね?と。
そして政治資金規正法違反を犯した議員をきびしく処分する立場の岡田克也幹事長は、
「違法なのは事実だが、事務的ミスでいちいち閣僚を辞めなければならないとするのが果たして適切なのか」
などと妄言を吐いている暇があったら、さっさと前原誠司外務大臣を処分せねばならないのではないのか。
しかもこの前原誠司外務大臣は、叩けばまだまだホコリが出そうな存在だ。マスコミはあえて触れないようだが、どうやら暴力団が関係している企業からの政治資金を受け取っており、しかも政治資金収支報告書に虚偽記載していた可能性があると言われている。
「まえはら誠司東京後援会」という政治団体がある。2009年の政治資金報告書にある企業が50万円のパーティー券を購入したと記載されていた。しかし、その企業はパーティー券を購入していないという。
これが事実ならば、まさしく虚偽記載ではないか。
このパーティーでは1820万円の収入が合ったという。そのうちの50万円について虚偽記載がされていた疑いだ。
さて、ここで記載されていたパーティー券を購入した企業は千葉県四街道市の番組制作会社なのだが、その社長は語る。
「前原議員とは関係がなく、なぜこうなったのか分からない」
あれれ?どういうことだ?
パーティー券など購入していないと言っている。しかし「まえはら誠司東京後援会」の政治資金報告書には記載されている。どちらかが嘘をついている。
きっとこれも前原誠司外務大臣や岡田克也幹事長は言うのだろう。
「事務的なミスだ。訂正すればよい。」
この国は法治国家ではない。
──長くなっているがもう少し書きたい。
一方、民主党の政治と金の問題では先輩格である小沢一郎元代表の問題はどうだ。
こちらは検察が叩いてもホコリが出なかったという厳然たる事実がある。もっとも、この国は国策捜査で犯罪者をでっち上げることができるこわーい国であることも忘れてはならないが。
まず、陸山会は、新政治問題研究会と未来産業研究会からの献金をそのまんま正直に収支報告書に記載した。するとこれらの政治団体は架空の団体であり、本当は西松建設からの献金だと書かなかったという言いがかりで虚偽記載とされた。
しかしその後、これらの団体が実在していたため、大久保隆規氏は無罪になった(マスコミはあえて報道しなかった)。
次に不動産取得の期日を移転登記の日時で報告したら虚偽記載とされた。しかしこれも購入した土地が農地であり、農地法の規定により移転登記がずれた。
陸山会はこれまた正直に移転登記が可能になった日付で届け出を行った。しかもこの時に動いた金につていも、銀行融資を受けた記録、返済した記録がこれまた正直に収支報告書に記載されたが、ここの銀行融資が実行された日と資金の決済に間が開いた。小澤一郎(小沢と区別して一私人)が立て替えたからだ。
しかし、一時的な立て替えは収支報告書には記載しない。これは慣例だ。問題ない。
しかし、これも虚偽記載であり犯罪と決めつけられてしまった。
だが、検察はこれもまた立件できなかった。
それだけのことだ。それこそ前原誠司外務大臣や岡田克也幹事長が言うところの「事務的ミス」ですらない。
民主党執行部は、正気とは思えない動きを見せている。
この民主党執行部の気味の悪さは以下の記事でも書いたので参考されたし。