31日、朴槿恵大統領は、周辺4強国大使の人選を終えた。その人選で、賛否両論が出ている。
駐米韓国大使:安豪栄(アン・ホヨン)元外交部第1次官
駐中大使:権寧世(クォン・ヨンセ)元セヌリ党議員
駐日大使:李丙h(イ・ビョンギ)セヌリ党汝矣島研究所顧問
駐ロシア大使は魏聖洛(ウィ・ソンラク)氏が留任となっている。
さて、全員について触れると長くなるので、今回は上記の中から駐米大使について見てみたい。
というのも、北朝鮮との緊張の中で、米軍に依存すること大なる韓国が、この度の人選では米国を軽視しているのではないか、という批判がでているからだ。
第一の理由は、これまでの慣例である。これまで駐米大使には、元首相や元閣僚といった重みのある人選が行われてきている。
ところがこの度選ばれた安豪栄氏は、元外交部第一次官である。しかも政務部門では無く、通称部門の専門家だ。
しかも現在の駐米大使がまだ任命されて1年しかたっていないのに留任させなかったことも批判の理由になっている。これでは米国との強いパイプが維持できないのではないか、という批判だ。
そのため、現在緊張が高まっている対北朝鮮に関する調整は、尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部長官が実質の担当者になるのだろう、と言われている。それほど心許ない。
その結果、この度の朴槿恵大統領の人事は、専門性も適材適所も無視して居るではないか、とセヌリ党からも批判が出ているのだ。
ただ、安豪栄氏は米国との関係は決して浅いわけでも無い。安豪栄氏は李明博政権時には、外交通商部通商交渉調整官を努めており、このとき、米韓自由貿易協定(FTA)提携津に寄与している。もっとも、このFTAが韓国にとって良かったかどうかはここでは触れないでおく。
また、駐ジュネーブ代表部参事官など、通商専門家としては活躍してきているのだ。決して無能な人物では無い。
しかし、あくまで通商専門家ではないか、という部分で批判されている。特に北朝鮮との緊張が高まる現在、米韓原子力協力協定などの懸案も解決せねばならない。そのための専門性が危惧されている。
そしてこの人選が批判されているより大きな理由は、大使の人選は、相手国へのメッセージになる、という習慣があるからなのだ。つまり、米国軽視のメッセージを送ってしまう可能性が危惧されている。
だから、元首相などの重量級人事ではなく、次官級を米国に送り込むことが問題視されている。民主統合党の洪翼杓(ホン・イクピョ)議員も批判している。
「朴槿恵系の実力者と知られる権寧世(クォン・ヨンセ)駐中大使内定者よりも級が落ちる安元次官の人選が、米国に誤ったシグナルを与えるおそれがある」
そして某民主党所属外交通商委員は、最近米国の人達からこう言われたという。
「朴大統領はひょっとして父の殺害過程に対するCIA(米中央情報局)介入説を意識しているのではないかと心配していた。朴大統領が父の影響で意外にも民族主義的性向に向かうのではという不安感が感じられたが、今回の駐米大使人選がこうした水面下気流に影響を与え、韓米間に目に見えない摩擦が生じるおそれがある」
また、某国際政治学教授も言う。
「李明博政権が09年初め、韓悳洙(ハン・ドクス)元首相(現貿易協会長)を駐米大使として送った際、FTA再協議という懸案があったとすれば、今回は政務問題が核心であるのに、通商専門家を抜てきしたのは理解しがたい」
さらに米韓は同盟60周年を迎えて、在韓米軍分担金交渉などもあり、ますます通商分野よりも政務分野に通じた人材が求められている。
さて、他の人選にも批判が多い朴槿恵大統領の大使人選だが、米国はどのようなメッセージとうけとっただろうか。